第二十四話      「―追憶其之肆―いなくなったセリア」
――翌朝――
一般人C「あったぞ――――!!」
主役の人「おお良かった良かった。」
皆に集合の合図がかかった。




クロウ「セリアが…いない………?」
初めて言葉に出して呟いた。若しや昨夜の怪しい人気の主に?
主役の人「えっ!?」
一般人A「そういえば姿が見えんな。」
一般人B「まだ仮面を探しているんじゃないか?」
だと良いのだが。


一通り見て廻った。しかし居ない。
クロウ「若しかして……何かに襲われたのか?」
一般人A「どうしてそんな事が分かるんだ?」
昨晩怪しい人気が感じられたことを話した。
クロウ「くそ……………。」
一般人A「いや昨夜は皆仮面探しに躍起になっていたから、誰もお前を責めることは出来ない。」
悪ガキ「ったくてめえは来たときからセリアとずっと近くにいたのに何でこんな時に限って離れるんだよ!全くてめえは……。」
主役の人「ちょっと待てお前それじゃあクロウだけが悪い事になるじゃねえかよ。」
悪ガキ「だってそうだろ!こいつが目を離さなければセリアは……」
拳を振りかぶり思いきり…。すかした。後ろに回り込んでいる。
クロウ「昨日の事は許したが今日の事は許すとは限らないぞ…。仏の顔も三度という諺があるが、俺は仏ではない、という事は言っておこうか。このまま勝手を言い続けるのであれば捨て置く訳にはいかぬ。また話を抉らせて長くするかも知れんからな。」

悪ガキの額に冷や汗が流れる。
悪ガキ「じゃ、じゃあてめえさっさと探してこいよ!」
クロウ「やることをどっか取り違えている八つ当たり馬鹿に言われずとも最初からそのつもりだ。」
もう一度辺りを探してみることにした。あの人気を感じた所の上の茂みに行ってみた。


辺りを見回してみる。竹?いやこれは…セリアの笛!?
やはり誰かに攫われたのだろうか?
クロウ「この道は…一体何処に通じている?」
茂みの近くに道があった。一体何の為に?


もう一度集合した。
一般人A「見付からない………………………。」
一般人B「もう一度探すか…。」
クロウ「いやセリアはここに居ないと見て良い。最初の仮面の時とつい先程までこの村全体を探していた。それぞれの人がいろんな所を見てみた。それでも見付からない、となるとこの村にいるという可能性はまず以て無い。恐らく、他の所に攫われたのだろう。」
その言葉の下にセリアを探し始めた。二十名程はセリアが自力で戻ってくる可能性を考えて村に残った。





――迷いの森――
あの道はここに通じていたのか、と思った。入るな危険と書いてある看板がある。
確かに危険かもしれない。何か一つ。感覚が抜け落ちているような感じがする。
戻り、この周辺の森を探した。



夕方になりセリアの家族の所に行った。(と言っても彼女の母だけだが)
クロウ「少し気になる事があるんですが。」

セリア母「何ですか?」
クロウ「あの迷いの森ってどこに通じているんですか。」
セリア母「あそこは今対立している部族の村に通じているんです。」

クロウ「何故、対立しているんですか?」

セリア母「それは私達の部族はそもそも一つだったんです。けれども、二つのグループに分れてしまったんですよ昔。それが対立が激化して今に至るんです。何故か向こうの部族とここでは交互に産まれるんです。大人になる人が。それ以来お互いを攻撃しながら今…こちらの部族に大人が生れこちらが正規の部族なんですよ。」
クロウ「………。」



――その深夜三時――
眠れなかった。あの付近にセリアの笛が落ちていたという事は、あそこの辺りで連れ去られた可能性が大きい。


だが言えない。
言えば部族間の問題となりもし間違っていた場合、いやそうでなくても両間に永遠に埋まらない溝を作る事となる。憶測で物を言うのはこの場合は控えたほうがよさそうだ。


ヒュッ!
矢文が投げ込まれた。

「セリアは預かった。返して欲しくば、迷いの森の奥にある広場にて堂々一騎討ちを望む。
                             アーク・セルバス」
ありふれた脅し、だな。

昔、奴と会い戦った時、再戦ならいつでも、と言った。士として認めあったからだ。紙一重の差で勝った。
しかしこんな奴だったのか。これは既に士と呼べるものでは、ない。

こんな奴と戦っても何の意味も無い。


会って、糺す。そしてセリアを助ける。それしか無い。

作者後書き
戦闘のレベルっていうのは同程度の実力がぶつかった時に濃密なものになると思います。
実力に差がありすぎるのはつまらない。物語の流れの一つになってしまいます。
一つの出来事としてピックアップするのには実力の均衡という緊張感が必要なのでしょう。

シュンの一言:矢文って何か良い伝達方法じゃないですよね。FF6のオペラ劇場のオルトロスみたいになる可能性だってありますし。