第二十一話        「―追憶其之壱―森の風習」
この森に来てから(というよりも意識を取り戻してから)三週間が経った。
ここの人たちともそこそこ仲良くなった。そういえば義勇軍に入ってからろくに人と話をしていなかった。
傷も大分治ってきた。もう開くことはないだろう。
セリア「どうですか?傷の調子は。」
クロウ「おかげさまで大分治ってきたよ。」
で傷が治り元通り刀が振るえるようになるまで何もしなかった訳でもない。専ら術の修行に充てたのであるが、体の鈍りはどうしようもない。
久しぶりに外に出た。感覚を元に戻すための修行をする為に。やたら自然を傷つけるわけにもいかんな。
クロウ「この森の中にある程度大きな滝はあるか。」
セリア「えっと……一つここから北に1km離れた所に……って何しに行くんですか?」
クロウ「修行。夕方までには戻る。」
そう言うと北に向かって歩いて行った。


―新緑の滝―
クロウ「ここか……。」
とりあえず一通り師から習った技を奥義を除いて滝に向けて撃った。
大分威力が落ちていた。まあ三週間もブランクがあったのだから当然か。だが最も得意としていた抜刀術で滝を切れなかったのはまずいな。




言った通り夕方には戻ってきた。何か準備をしていた。祭り、か………?
セリア「あっ、戻ってきましたね。」
クロウ「ああ……で、何だこの動きは?」
セリア「これは…まあ端的にいえば祭り…ですね。折角だから出てみます?」
クロウ「いや余所者が出てもいいのか?」
セリア「準備を手伝えばだれでも出れるんですよ。」
クロウ「成程な……だとすれば俺は何を手伝えば良い?」
セリア「いやあなたが何をできるかによりますけど?あなたの特技ってなんですか?」
クロウ「剣術、かな?後は刃物の手入れ。」
セリア「じゃあ仮面劇の手伝いをしてください。仮面の削り出しの刃物の手入れと剣術を教えてあげてください。」



―仮面削り出し場―
で。切れ味が落ちた刃物の手入れをした。余り良く手入れされてないな、と思って簡単な手入れの仕方を教えた。





感謝された。仮面をたかだか十五個作っただけで。それ程大きな事なのだろうか。
余り人に感謝されてないな、今まで。まあ仕方のないことだ。報いてほしくて人斬りをやっているわけではない。
一般人「ありがとうございます。お蔭で三倍早く、そしていつもより奇麗に仕上がり終わりました。」
クロウ「そんな。私は少し助言をしただけですよ。」
今は朝の五時。それこそ不眠不休で作業を進めていた。朝日が差し込んできた。
一般人「じゃあそろそろ休むかぁ〜〜。」
それぞれ布団を敷いて寝始めた。さて俺も…椅子に座って寝始めた。


――三時間後――
目が覚めた。しかし何もやる事はない。
外に出た。
セリア「早いですね。もう終わったそうですね。」
外に出ると笑顔のセリアがいた。
クロウ「セリア。」
セリア「はい?」
クロウ「この祭りの仮面劇って何のためにやるんだ?」
セリア「どうやら神様に奉納するためらしいんです。」
クロウ「何かやって欲しい事があれば呼んでくれ。それで多少の恩返しには、なる。救ってくれたここの人や君にな。」






――四時間後――
ぞろぞろと仮眠を取り終えた人達が出てくる。
クロウ「そういえば、ここに何で大人がいないんだ?」
セリア「まあそれは私達が『妖精の子』だからなんです。60年に一人大人になる男の人が生まれますけど。その人が族長になるんです。でも女の人は二十人に一人は大人が生まれるんです。」
一般人「お〜い配役を決めるぞからこーい。」
セリア「は〜い。じゃあクロウさんも行きましょ。」
クロウ「いや、俺は関係が………………。」
セリア「まあ遠慮しないで♪」

俺は半ば強引に話し合いの場に行く事になった。

――広場――
姫の役(どうやら女の子は仮面を被らないらしい)はセリアに決まった。
セリアは相当綺麗な娘だから妥当だろう。
まあ、俺は剣術の指南に……

作者後書き
じつはクロウは人の為にしか剣を振るわない、というコンセプトの元、物語を構築していきます。
クロウの過去話、というのは意外な一面を書いてみようと思いますし(ただし書くとは限らない)、
少し驚くかもしれませんね。クロウの性格には。

シュンの一言:滝を切るにはどれほどの力が必要なんでしょうね?