第十話         「血の痛み」

ニーシェは鞭からナイフに武器を変えていた。
相手が登山口から攻め登ってくる。
手筈通り、ニーシェ、シルフィアの隊とアルドの分隊が三方より攻めかかる。
狙い通り狭い道を通ってくるため、陣形が細く伸びてしまっている。
何より三方より攻められている以上、劣勢になっていく。
しかし多勢に無勢、しばらくすると押され始めてきた。
シルフィア「ひるむなぁー!!」
叱咤した所で十倍の敵に怯まない方がおかしいものである。
戦が初めてなのに、猛戦してくる相手にたじろかないのもおかしい。無理な物は無理である。
大体にしてシルフィア自身が不安なのである。将の雰囲気は兵にも大きく影響する。
シルフィアの周りにも敵が犇めき始めていた。ナイフを抜いて切りつける。
鮮血。人を殺すというのは嫌な感覚がするものだ、と冷静に分析する。



―こちらフェインの場所―
フェインは伍、陸、漆の軍劣勢の報を聞いた。
フェイン「これより、相手の側面に向けて突撃を開始する。」
と言った。しかし、動き始めてすぐ後に伍、陸、漆の軍が後退してきた。
フェイン「仕方ない…。各軍の隊長に被害状況を聞いて状況によっては交代しろ!!」
副将「はっ!!」



フェインがシルフィアのもとに辿り着いた。
シルフィア「あっ、フェイン!」
フェイン「シルフィア、被害状況を教えてくれ!」
シルフィア「重傷の者が百名近い。死人も十数名出ている。そして無傷の者はいない。」
フェイン「わかった。じゃあ俺が交代するからお前達は本陣に戻って傷の手当と休養をとれ!」
シルフィア「わかった!」
シルフィアの軍は引き揚げた。ニーシェの軍も引き揚げているのが見える。
一気に側面から突撃した。相手が退いていく。
勝ったか?と思ったのも束の間、相手も新手を投入してきた。
フェインが鉄の剣(戦の前に支給されていた)を振る。相手の首が飛ぶ。
戦いはずい分前から始まっていたこともあり、辺りは血の海と化していた。


暫くしてヤマチュウの軍も突撃してきた。
相手も最後の新手を投入してくる。総力戦となった。
しかし軍勢が多いにせよ、長引く戦いで相手の士気は落ちていた。












ヤマチュウ「あれは…味方か?」
何やら敵後方に突撃して来る者がいた。その数約三千。
相手の軍は総崩れになった。兵が四散する。勝ったのだろう…。
もう既に日が暮れかけていた。



作者後書き
バトルに続き、戦を書くことになりました。
結構残酷な描写も多くなりました。あまり書きたくないですよ、こういう物も。


シュンの一言:フェインには鉄の剣支給してシルフィアには鉄の弓とかも何も無しかよ・・・